2011 World Glaucoma Congress印象記

WGCに参加して思うこと

青木由紀(自治医科大学眼科)

さかのぼること10ヶ月程前になります。指導医である自治医科大学講師の国松志保先生から私の大好きな都市、パリでWorld Glaucoma Congress(WGC)が開催されると伺い、英語の苦手な私ですがここぞとばかりに奮起してポスター発表を決意いたしました。私の所属している自治医科大学眼科は医局員がかなり少なく、いくら非力要員でも6日間も居ないとなれば大事です。他の医局員にはかなり迷惑をかけることになるため、事前に仕事の整理や申し送りと十分な準備が必要でした。また演題採択後、ほっとしていたところで、自分の妊娠が発覚。嬉しい反面、はたして学会には行けるのだろうかと内心はらはらしていました。しかし、優しい産科主治医より「安定期に入っている時期だから大丈夫だと思います」と助言をいただき、心配する夫を独り日本に残し、お腹の子とともにパリへ出発いたしました。

学会会場はポルトマイヨーというパリ中心部からやや外れた街でしたが、パリは東京都内のように地下鉄が発達しています。メトロに乗ればパリ中心部からでも最寄駅にすぐ到着、しかも駅から会場へは直結しており方向音痴の私でも迷わず会場へ着くことができます。今回のWGCにおけるポスター発表の総演題数は740題と膨大な量であり、かなり広い会場が用意されていました。また、一般口演やシンポジウムを含めて、朝8時から午後5時半まで密にプログラムスケジュールが組まれています。ポスターを見て回るだけでも相当な時間がかかりましたが、ポスターにも各国の国民性があらわれているようで、内容とともにその色彩やレイアウトなどを楽しく勉強できる時間になりました。

今回の学会参加では緑内障の知識の蓄積に加えて、大好きなパリのおいしい食事、かわいい子供服など本当に沢山の得るものがありました。海外学会の参加には、国内での学会と比較して語学の問題や参加期間中の仕事の整理など、面倒なことも多々あるため、私のように参加を躊躇してしまう若い先生方も多いと思われます。しかし、学会の開催場所を良く調べ、自分の行きたい国や地域で各種学会がある場合は、是非にでも参加してみることを今後は若い皆にも薦めてみようと思います。

最後に、心配しながらも最終的には学会へ行かせてくれた夫と、学会期間中に私の代わりに仕事を頑張ってくれた若い医局員の皆様、また帰国までお腹のなかでおとなしく、でも元気でいてくれた子供に感謝します。



WGC 2011 in Parisに参加して

阿部早苗(秋田大学医学部眼科)

2011年6月29日から7月2日にパリで開催された第4回世界緑内障学会に参加しました。一昨年にボストンで開催された第3回世界緑内障学会に続き、2回目の参加です。パリを訪れたのは初めてで、エッフェル塔や凱旋門を実際に目にしたときはやはり感動しました。町全体がおしゃれで、どこを写真にとっても絵になります。市内は世界中からの観光客で溢れ、さらに7月1日からはフランス人も夏休みが始まるそうで、どこに行っても多くの人でにぎわっていました。

さて、本学会では主にインプラントに関するセッションを中心に聞きました。その中でも特に印象に残ったのはSteven J. Gedde先生の発表されたTreatment outcomes in the Tube Versus Trabeculectomy (TVT) study after five years of follow-upです。Baerveldt glaucoma implantでの治療群と線維柱帯切除術での治療群の治療成績を前向きに比較した試験で、今回の発表によると2群間で眼圧に差がなかったとのことでした。今後、日本でもインプラントの導入が検討されているようなので、この結果は大変参考になると思われました。

今回、私はポスターでの発表でした。ポスター会場では、ポスターが貼られていないボードも目立ちました。日本の学会と違って、セッションとセッションの間のブレイクの時間が長く、ゆっくりとポスターを見ることができました。ポスター発表者には、どのブレイクでポスターの前に立つかをポスターの横に紙に書いて貼っておくよう指示されていました。しかし、実際に貼っている人はほとんどいませんでした。また、ブレイクの間にポスター会場にいても活発なやり取りがなされているという感じではありませんでした。やはり見どころの多いパリですので、観光などに行かれた先生も多かったのではないでしょうか。

機械展示場では、SENSIMEDというスイスの会社のTriggerfishという眼圧測定装置に興味をもちました。コンタクトレンズの中に、センサーが埋め込まれていて、コンタクトを装着することにより24時間の眼圧をモニターすることができる装置です。日本でもそのうち治験をするかもしれないとのことでした。こちらでデータが取れるようになると、いままであまり明らかではなかった患者さんごとの日内変動がわかり、よりオーダーメイドな治療が行えるのではと思いました。

今回の学会では非常に有意義な4日間を過ごすことができました。学会出席を援助して頂きました日本緑内障学会、医局の先生方に感謝いたします。



初めてのWGC

井上俊洋(熊本大学医学部眼科)

パリで第4回World Glaucoma Congressが開催されました。自分にとっては初めての本学会参加でした。往路は前泊して6月28日の朝に福岡発、成田経由、パリ着。およそ15時間半の旅でした。宿泊はHotel Concorde La Fayette。学会場と同じ建物にあり、33階まで客室のある高層ビルでした。私自身の発表のタイトルは「The effect of aqueous monocyte chemotactic protein-1 concentration on the short-term failure of trabeculectomy with mitomycin C in eyes with open-angle glaucoma」で、房水内のサイトカイン、特にMCP-1がトラベクレクトミーの成績に悪い影響を及ぼすことを明らかにした研究でした。ポスター発表だったのですが、会場全体としてディスカッションはあまり活発ではないようで、私自身の発表も質問は特にありませんでした。初日に展示会場に立っていたので、参加者自体が少なかったのかもしれません。学術的な内容については、手術に関する発表では近年登場した術式・器具の中長期的な成績が増えた印象があります。

中でも金属製シャントのExPRESSやバルブインプラントなどは、日本でも審議中とのことですので、その認可が待たれます。ExPRESSを用いた手術は原理としてはトラベクレクトミーと同様ですが、線維柱帯や虹彩を切除する必要がありませんので、前房出血を生じやすい症例では有利と考えました。バルブインプラントは難治症例で適応となるかと思いますが、トラベクレクトミーと比較して再手術が容易と言われています。しかしながら進行性の内皮障害や眼球運動障害など独自の合併症もあり、日本人での有用性については認可後も検討の必要があると考えました。また緑内障眼底のOCT(光干渉断層計)所見も視神経乳頭だけでなく黄斑周辺の神経節細胞層を評価する発表が目立ち、今後の研究の方向性を示すものと思いました。視野測定は時間と労力がかかり、患者本人の反応に頼るために完全な客観的な検査とはいえません。将来的に視野を測定しなくても緑内障の進行が判定できれば、患者と医療者両者の負担が減少するとともに客観的な評価が可能となります。

帰りは7月2日パリ発、日付変わって羽田経由、熊本着で、旅程を無事に終了することができました。フェローシップグラントにて援助いただいたことに心より感謝いたします。



芸術の都パリでの学会と出逢い

山梨大学医学部眼科 北村一義

今回私が国際緑内障学会で発表することになったのは、山梨大学の柏木賢治先生の勧めがきっかけであった。眼科医としては4年目という若輩者であり、英語でのコミュニケーションなども不安は多かったが、大変貴重な機会であり勇気を出して参加してみることにした。

フランスまでは直行便で向かったが、片道12時間のフライトはやはり長く疲れた。しかし期待と興奮で機内ではほとんど眠ることができなかった。
フランスには夕方に到着したが、空港を出ると想像以上に暑い。日本でも今年は連日暑い日が続いているが、フランスでも同様でムッとする暑さに迎えられた。
パリには以前に一度行ったことがあり、ある程度街のロケーションは把握していたが、今回はバカンス前だったせいもあるのか観光客も多く、移動遊園地なるものもあり街は活気に溢れていた。

学会前日はゆっくりフライトの疲れを癒し、6月29日朝にいよいよ学会会場Le Palais des Congres de Parisへ。パリはメトロが発達しており料金も安価なため、会場へはメトロにて移動。駅を降りてまず会場の大きさに仰天した。やはり開催場所が良いからだろうか今年は参加人数もかなり多いとのことであった。

受付を済ませ、ポスター会場へ。700超のポスターのスペースもやはり広大、自分の場所を見つけるのも一苦労であった。今回私は10年間の眼圧変化と血圧などの全身因子の関連について発表した。会場には日本人の先生方も多く、山梨大学の上司の柏木賢治先生、間渕文彦先生、石嶋清隆先生にお会いすることができ、久しぶりに日本語で会話ができホッと一安心。せっかくなのでポスターの前にて皆で記念撮影。

その後は、色々とポスターを見学しながら時折自分のポスターの前に戻り質問がこないか待機。初日は特に質問などは受けなかった。

器械展示を一通り見学し、講演会場へ。英語の講演を聞く機会は初めてだったが、やはり理解がワンテンポ遅れるためかなかなか難しい。

夕方からは山梨大学出身の津村豊明先生と一緒に来られている先生方と合流した。
鈴村弘隆先生、吉川啓司先生、木村泰朗先生、溝上志朗先生、南野麻美先生、内藤知子先生、木村聡先生(順不同)の7名の先生方。初対面だったのだが、緑内障領域で高名な先生方ばかりで正直圧倒されるばかり。しかし、話をさせて頂くとどの先生もとても気さくで、すぐに打ち解けることができた。滞在中は同じホテルだったこともあり、食事などで先生方と過ごし語り合えた時間は、一生の思い出に残る大変貴重な機会であった。

7月1日には学会主催のGala Dinnerにも参加した。立食形式のカクテルパーティーであった。日本のみならず欧米・アジアなどの権威の先生方が、バンドの歌に合わせてダンスをされており大変活気に満ちたものであった。
今回の学会に参加できたおかげで、緑内障領域への関心がますます強くなると同時に、国際的な分野での研究、留学などに対する興味が自分の中で強まった大変貴重な機会であった。

このようなチャンスを与えて下さった諸先生方、フェローシップグラントによるご援助に深く感謝をしたい。



WGCに参加して

東京医科大学 眼科学講座 丸山勝彦

今回、日本緑内障学会フェローシップグラントによるサポートのもと、World Glaucoma Congressに参加する機会を得たのでご報告させていただく。

今回のWorld Glaucoma Congressは2011年6月29日から7月2日までフランスのパリで行われた。世界各国から最新の基礎研究や臨床研究の成果が発表される、高レベルの学会であることはもちろんのこと、コンパクトな規模でいわゆる世界的権威の先生方を間近にすることができる高密度の学会でもあり、充実した4日間であった。

今回私が発表した内容は、トラボプロスト点眼により上眼瞼溝の深化(Deepening of upper eyelid sulcus; DUES)が生じる頻度についてである。われわれの検討では、トラボプロスト投与後3か月で53%の症例にDUESが生じることが判明した。DUESに関する演題は、タフルプロスト点眼によるDUES発症頻度に関する報告が1報、DUES発症にかかわる基礎研究の結果が1報あり、全てが本邦からの報告であったが、会場では各国の先生方に興味をもっていただき、多くの意見やアドバイスを頂戴することができた。
美容上の副作用の発現は投薬アドヒアランスを低下させ、治療不成功の原因となる可能性もある。今後は各プロスタグランジン製剤のDUES発生頻度の検討や、発症そのもの、あるいはDUESの重症度に関与する因子を検討していきたいと考えている。

プログラムの中で個人的に興味深く感じたのは学会3日目のWGA SURGERY DAYでの各セッションであった。手術療法に関する現在の論点を整理することができ、また、臨床家として日々感じている疑問点や問題点に対する見解をサマライズすることができて、非常に有意義であった。近い将来わが国でも施術が可能となるかもしれないインプラント手術に関するセッションも大変参考になった。

日本から参加された先輩の先生方の活躍を拝見できたのも今回の学会の大きな収穫である。学会長を務められた新家眞先生をはじめ、諸先生方が国際学会の舞台で堂々と討論に参加している姿に感銘を受けた。

今回、日本緑内障学会フェローシップグラントへの申請を採択していただいたことに感謝し、日本緑内障学会理事長の新家 眞先生、学術担当理事の谷原秀信先生、審査して下さった先生方に心よりお礼を申し上げたい。今回の経験を生かし、今後臨床、研究に成果を挙げられるよう精進したいと考えている。